プロローグ :・・
そこは標高1000メートルほどの・とあるアメリカの片田舎に小さな牧場を営む敬虔なクリスチャン一家が住んでいました。少年は夕食を終えると毎日のように決まって夕闇が迫る前に家の外に出ては太陽の香りの残る牧草の中に仰向けになり、昼間、学校で習った星座の位置を確認したり、今にも顔面に落ちてきそうに降りそそぐ星々たちを、唯々、観察していることが好きな少年でした。時として寝入り込むこともあり、そんな時、母の遠くからの呼び声で起こされたのでした。古代の人の天空の星たちへの想いは、神々への敬虔な祈りと同じように、星座の命名のドラマによって知ることが出来ました。ギリシャ神話の生成過程がそうであったように・・。日課として毎日のように星座を見続けているものの、その心の憧憬は、ガリレオ・ガリレイにはじまってケプラーからニュートンにまで膨らんで行きました。それに専門外でしたがエレガントな級数比(=黄金比率)を発見したイタリアの数学者・フィナボッチ(13世紀)にも及びました。最近、ダヴィンチ・コードで有名な・あの天才!レオナルド・ダ・ヴィンチ(=ヴィンチ村のレオナルドさん)の描く構図にも少なからず、そして深く影響を与えていたようです。大学はもちろん天文学科のある大学を選びました。修士論文は「世界のかぐや姫伝説の思考過程の系譜と天体学」であったことからか、こんな役立たずの学問に就職先は見つかりませんでした。高校時代からの同じ天文部だった友人がある証券会社で理科系の人を募集していることを教えてくれました。そういえば天文学を志した直接の動機は、天空にきらめく無数の・そして余りにもランダムな星々の軌道を統一概念として一括りにして把握できないものか?そのことを子供心に夢見みていたのではなかったのではないのだろうか・と。尊敬するあのアインシュタイン博士のように・・。株式市場では毎日のように数え切れないほどのランダムな数字の羅列が展開されています。それは天体の無数の星たちと見て取れないこともないのです。そう思うに至ったとき証券会社入りを決断しました。もうこの頃になると証券界に「ウォール街のランダム・ウォーク」論があることは知っていました。つまり、それは株価の動きなんて、酔っ払いの千鳥足に似て、ランダムで規則性がなく、その中から法則性を見出すのは所詮、無理な話だ!という考え方です・・。一時、この理論が主流であったこともあります。つまり、多くのファンダメンタリストがそうであるように相場のテクニカル側面を軽視する傾向があったのです。しかし今を謳歌する現代金融資本主義の原点となった金融派生商品はデリバティブ理論の確立によってのみ可能になったのでありますが、当時の金融界はその芽生えすら感じられないものでした。このような状況の下で彼は除々にではありますが、精緻に、彼流の数理理論を駆使して従来とは違った意味での理論を組み立てて行きました。一方では現役のディーラーであるA氏のようにチャートを高々と振りかざしては、それを五線譜に置き換え、このチャートはモーツアルトのケッヘル何番に似ているといって夫々を分類し、しかもパターン化してシステムトレードの用に充てているいるロマンチストもいる程なんですから!!それもそのはずですね!!星座を五線譜に置き換えて作曲する人もいるくらいなのですから!!。その後の研究は確実に進んで行きました。もちろん、デリバティブ理論の確立に主導的役割を果たしたことはいうまでもありません。この理論の確立にあたって日本人・数学者の理論が最大なる助言者であったこと・いや「伊藤の公式」の存在の発見なくしてデリバティブ理論の成立すらなかったことが様々な金融工学の書物の記述の中で語られていますが、それを読んだとき、我が事のように・鳥肌が立つような感動を覚えたことを鮮明に記憶しています。ある記者が先生に向かって、先生の公式(確率微分方程式)は、試験管の中のブラウン運動的・ランダムで不規則な自然界の様々な現象から、解析不能と思われていた無秩序な社会事象の解析の解法に、さらには金融工学にまで応用されているようですがと話を向けると先生は”そんなところにまで利用されているの?”と怪訝そうに唯、笑っているだけでした。先生のお人柄が忍ばれるというものです。今回の初代ガウス賞の受賞は、60有余年にしてようやく孤高の・しかもご高齢な日本人数学者に陽があたりました。一方の天文学から転向した彼はというと、とうにノーベル経済学賞を受賞していたのですが・でも、ウォール街では夙に有名な伊藤清先生ではありますが・・こんな人って日本に一杯いるんじゃありません?それが国力というものなんでしょう?フロイデンの隠されたコード:芸術(美術・音楽)・宇宙・ばくち打ち・それに・?。この一文はこれまでに読み・そして学んだ書物からの事実と記憶からの創作です。逐加的補足も。相場を真摯に志す若者たちへのインビテーション!
フロイデン記 myg.t@sepia.ocn.ne.jp